高田馬場といえば鉄腕アトム
山手線の発車ベルでもおなじみだし、手塚プロゆかりの土地だ
そんな高田馬場の町で出会った喫茶店で、幸運にもアトムにまつわるお話を聞くことができた
色合いといい、書体といい、ちょっぴり和の雰囲気
店内は数組のお客ですでに賑わっていた
縦に長い店内で、グレーのソファはスナックのような大人の空気を醸し出している
レジの近くの席にはゲーム台
そしてお店の一番奥の壁には、きれいな風景の写真パネルが掲げられていた
パネルと共にお店の写真を撮りたいとお願いすると、マスターは電気を点けてくれたりして好意的に協力して下さった
ここからマスターがお話をたくさん聞かせてくれた
その中に「アトムにまつわるお話」が出てきたのだ
昔、つかさのあるビルの二階は手塚プロの仕事場で、手塚先生本人も何度かつかさを訪れたことがあるのだそう
先生が何処に座っていたとか何を食べていたとか、マスターは楽しそうにお話ししてくれた
当時は手塚プロへの来客たちが順番待ちのあいだにつかさでコーヒーを飲んだりしていたそうで、お店もだいぶ賑わっていたと懐かしんでいた
「今はこんなだよ、暇でねえ」とマスターは言うけれど、このあたりでつかさのような喫茶店はとっても貴重
これからも続いて欲しいと思う
「今暇だからね、いいもの見せてあげる」
そう言ってマスターはお店の奥に消えて行った
何だろうと待っていると、大きなプラスチックの板を抱えてマスターが戻ってきた
あ、アトムの看板!
手塚プロの仕事場があった当時、ビルの側面に掲げられていた外看板の一部で、上目遣いのかわいいアトムが大きく描いてあった
「すごいですね、素晴らしいお宝じゃないですか!」と、わたしもつい興奮してしまう
その看板の横で誇らしげに微笑むマスターのお顔もすごく素敵だった
喫茶店は、のんびりお茶の時間を楽しむ空間でもあり、出会った人々とのふれあいの場所でもある
美味しいコーヒーと素敵なお話、つかさでのひとときは本当に充実したものになった