にっぽり繊維街のメインストリートとはまた違う雰囲気の、東日暮里の路地裏
住宅地に紛れ込むように小さな喫茶店「ふじ」がある
目印は魚の絵のステンドグラスシール
外から見ると、中の照明と相まって幻想的な印象を受けた
ちょうど外も薄暗くなった頃で、そのせいもあって尚更ムードがあったように思う
そして、中に入ったわたしはその照明に再び感動させられることとなったのだ
天井を見上げると、光と影がもうとんでもなく凄いことになっていた
照明ひとつひとつのかわいらしさは勿論、さらにこの芸術的な影
ぽかんと口を開けてしばらく見入ってしまう
また、ふじは比較的天井が高く、この光と影をいっそうひきたてる好条件になっているとも感じた
訊くとこのお店自体は昔倉庫だったとのこと
しかも木造だそうで「音楽なんか流すといい音がするのよね」と奥さんが言った
ココアをお願いすると、トーストとゆで卵も一緒に運ばれてきた
どうやらその時間帯のサービスらしく、太っ腹だなあと嬉しくなった
この日わたしは珍しく熱心に読書をしてしまい、だいぶ長い時間をふじで過ごしてしまった
そんなわたしを見て奥さんは「トーストもっと焼いてあげようか?」と声をかけて下さった
有り難い気持ちでいっぱいになったけれどおなかもいっぱいだったので、トーストはお断りして代わりにコーヒーを一杯追加で注文した
コーヒーを飲みながら奥さんとたくさん話をした
特に荒川区の町の様子や行政のこと、住んでいる人ならではのあれこれが興味深かった
また奥さんが猫好きなことが分かり、一緒に猫の話にも花を咲かせた
「お店の入口から一番良く見えるところに、女性の絵を飾ると縁起がいいんですって」
そう教えてくれた奥さん
確かにふじはいつもたくさんのお客さんがひっきりなしに訪れて賑やかだ
ランチなどの食事メニューの無い喫茶店でそのような光景を見られると、なんだかこちらもうれしい気分になる
縁起のいい絵のおかげ…?
いや、あたたかいサービスと奥さんの人柄があってこそなのは言うまでもないだろう